コラム1

財産の分割方法は時代を動かす?~鎌倉時代から現代までの分割方法

1.現代は「法定相続」

現代日本の相続法において、財産の分割については「法定相続」という考え方があります。相続により財産をどのように分けるかは基本的には相続人の自由ですが、話がまとまらなかったりした場合には法定分割で分けた「法定相続分」により財産を承継します。このf法定相続分Jは戦後に民法によって定められています。(現行民法は昭和56年)
では、過去の日本においてはどのような分割方法があったのでしょうか。

例)配偶者、子3人の場合=今配偶者(1/2)、子A(1/6)、子B(1/6)、子c(1/6)

2.鎌倉時代は「分割相続」

鎌倉時代は武士階級が勃興した時代ですが、この時代の財産の分割方法としては「分割相続」という制度がありました。「分割相続」とは、一族の惣領(家長)が相続人全員に均等に財産を分割する方法のことをいいます。ここで言う「相続Jとは生前の相続、つまり贈与を含みますが、財産を均等に分け与えることで惣領との主従関係を確立し一族全体の団結を図ったのです。
しかし代替わりが進むにつれ、財産(主に土地)ーが細分化されてしまい、武士は経済的に困窮していきます。しだいに武士の不満は募ってゆき、反幕府勢力と結びつくことによって、鎌倉幕府は衰退のみちをたどります。

例)配偶者、子3人の場合=争配偶者(1/4)、子A(1/4)、子B(1/4)、子c(1/4)

3.室町から戦国時代は「選ばれた後継者に単独相続」

鎌倉時代末期から室町時代にかけては、鎌倉時代に主流であった「分割相続」から[単独相続」へと相続法が変わっていきます。「単独相続」とは一族の惣領から後継者にすべての財産を相続させる分割方法をいいます。これは「分割相続」による財産の細分化により一族の勢力が弱体化したことを教訓としてうまれた分割方法といえます。
しかし、この時代の「単独相続」における[後継者」は一族のうち優れた者を選び、相続させる方法で、あったため、後継者争いが頻発し、やがて戦国時代を迎える要因のひとつとなりました。

例)配偶者、子3人の場合=今後継者の子A(1/1)、配偶者(0)、子B(0)、子C(O)

4.江戸時代は「長子に単独相続」

乱世を経て江戸時代になると、前時代の教訓から基本的には長子(長男)にすべての財産を相続させる「単独相続」の制度が確立します。これにより後継者争いは減少し、江戸時代は比較的安定した時代を迎えます。
長子相続の考え方は、その後の明治時代以降、第二次世界大戦後まで続くこととなります。

例)配偶者、子3人の場合=今長子A(1/1}、配偶者(0)、子B(0)、子c(0)